ドクター・ディマティーニ「世界はバランスでできている!」レビュー

あるがままに「感謝」すると人生に奇跡が起こる

感謝の効果

「よく聞くのよ。
自分が恵まれていることに目を向けていつも感謝するのよ。
恵まれていることを知って人生に感謝する人には、
もっとたくさんの感謝できることが起こるものなの。」

幼い頃、母親はディマティーニにこのように教えてくれました。

本書「世界はバランスでできている!」の原題が『The Gratitude Effect』(直訳すると「感謝の効果」)であるように、この本のメインテーマは「感謝」についてです。

私たちは普段、自分にとって都合のいいことをしてもらったり、都合のいいことが起こったときに、「ありがとう」と言って感謝します。

しかし、ドクター・ディマティーニが本書の中で語っている感謝はこれとは全く異なるものです。

人生に起こるポジティブなこと(いいこと、サポート)とネガティブなこと(悪いこと、試練)の両方に「ありがとう」を言うことが真の意味での感謝だというのです。

恵みのない危機はない

ネガティブなことに感謝すると言われてもピンとこないかもしれません。

しかし、ドクター・ディマティーニは言います。

恵みのない危機などあり得ません。

得るものなくして失うことは決してなく、新しいチャンスの窓が閉じることもありません。

どんな悲劇もいつかそれを笑いとばすことができるものです。

危機が起こったとき、まさにそれと同時に起こる恵みを探して、待っていないで最初から感謝するのが賢明です。

と…。

本の中で、バイクレースで大事故を起こし、身体の一部にマヒの後遺症を負った男性のエピソードが紹介されています。

彼はケガがきっかけで一人のカイロプラクター(*)と出会います。

彼は治療によって、身体の機能がどんどん回復していきます。

これがきっかけとなり、彼自身もカイロプラクターになることを決意し、大学で博士号を取得します。

経験をつんだ彼は自分の治療院を開業し、バイクレーサーに特化して治療を行うようになります。

経済的に成功した彼は、バイクの会社を買収して自分のものにします。

バイクレースで大事故にあわなければ、彼はカイロプラクターになってたくさんの人たちに貢献することもなかったし、経済的に成功してバイクの会社を手に入れることもできませんでした。

当時、危機だと感じた出来事は、実は、彼にたくさんの贈り物を与えてくれた恵みだったのです。

このことに気付いた瞬間、ネガティブなことに思えた事故とケガに心から感謝できるようになったのです。

危機を感謝に変えた数々の事例

ドクター・ディマティーニは講演会やセミナーでこのようなエピソードをよく話します。

この本には、ディマティーニ・メソッドによって危機や悲劇的な状況を感謝に変えたエピソードがたくさん載っています。

  • ディマティーニ・メソッドによってスランプを乗り越えたロックスターの話
  • ディマティーニの奥さんのアテナ・スターウーマンが亡くなった後、スターという名前の女性が現れて、驚くようなシンクロニシティ(共時性)が起こった話
  • 飛行機の中で有頂天になって騒いでいたら飛行機が墜落した企業CEOの話
  • 脳に損傷を負って3年間昏睡状態だった少年がドクター・ディマティーニの治療によって劇的に回復した話
  • など…思わず引き込まれてしまう興味深いエピソードが満載です。

ドクター・ディマティーニの本は少し難しい内容もあり、読みにくく感じる人もいるようなのですが、この本は、他の翻訳本に比べてエピソードが豊富なのでとても読みやすいです。

そういう意味でも、ドクター・ディマティーニ初心者の方におすすめな一冊です。

「今この瞬間」への感謝

また、この本では、911(アメリカ同時多発テロ事件)によって、アメリカにどんな恵みがもたらされているかということを、ドクター・ディマティーニ自身がリストアップしています。

救いようのない悲劇と思えるような出来事にも、深く見ていけば必ず恵みがあることを教えてくれます。

この本の日本での発売は2011年の8月。

同年3月11日に起きた東日本大震災をどのように捉えるのか、新しい見方、考え方が示されているように思います。

震災の直後、日本中で多くの人たちが一斉に「今、自分に出来ることは何か?」と問いかけ、一人一人ができることをやりはじめました。

普通の生活がいかにありがたいものであったか、そして尊いものであったかということに多くの人が気付きました。

家族の絆、結びつきが強まりました。

この年の今年の漢字には、「絆」が選ばれましたね。

日本各地、そして世界各地からたくさんの善意が東北に送られました。

たくさんの人が協力し、団結しました。

被災地支援、ボランティアのためにたくさんの団体、組織、コミュニティーができました。

日本中でたくさんの人たちがつながりました。

新幹線がすべて安全に止まり、改めて日本の技術の高さが証明されました。

略奪や暴動が起こりませんでした。

日本人の他者を思いやる気持ち、精神性やモラルの高さを世界中が絶賛しました。

日本全体で防災に対する意識が高まりました。

再生可能エネルギーへの関心が高まり、その促進、研究が加速しました。

「人はいつ死ぬか分からない」という現実を見せられたことで、「自分がやりたいことを存分にやって生きよう」とたくさんの人たちが強く思いました。

そして、自分の人生を生き始めました。

もちろん、大勢の方が亡くなり、たくさんの人たちがつらい思いをしたことも事実です。

しかし、悲劇や痛みの中に、同じだけの恵みや喜びを見つけたとき、”あるがまま”を受け入れることができるようになります。

そして、”今この瞬間”に感謝できるようになります。

この本は、その方法を教えてくれる本なのです。

飛田貴生

*カイロプラクティックのドクターのこと。カイロプラクティックは、脊椎のゆがみを調整することで神経の流れを改善し、人間が本来持っている自然治癒力をよみがえらせる治療法。ドクター・ディマティーニもカイロプラクターです。

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