漫画「菌と鉄」の感想 自分の頭で考えないとキノコが生える
「進撃の巨人」の作者が絶賛する新連載
別冊少年マガジンで連載がスタートした『菌と鉄』という漫画を読みました。
『進撃の巨人』の作者の諫山創さんが、絶賛していたんです。
「アミガサ」という、謎のキノコ(菌類)によって、人類が支配・管理されている、世界のお話。
え、キノコが人類を支配するって、いったい、どうやるの?
最初は、そう、思ったんですけど、このキノコは、菌糸(きんし)の状態で、人間の脳に、寄生できるんです。
で、人の脳の神経細胞を、乗っ取ってしまう。
そうやって、キノコは、人間を、洗脳し、支配できるらしい。
人間を支配するシンプルな方法
キノコの洗脳のやり方は、とっても、シンプル。
人間から、
”自分で考える力(自由意志)を奪う”
ただそれだけ。
自分で考える力を失った人間たちは、ただ、キノコの命令を、実行する奴隷になってしまう。
キノコによって、支配・管理された人類は、狭い壁の中に閉じ込められて、
毎日、まったく同じルーティンを繰り返すことを、何年も、何十年も続けて生きている…。
ばっちり洗脳が効いているから、そんな無味乾燥な毎日を、誰も、疑問に思うこともない。
だけど、主人公の少年の「ダンテ」だけは、どういうわけか、キノコによる洗脳の影響を受けずに、
「なんか、これって、おかしくね?」
と、”自分の頭で考える力”(自由意志)を、持っているんです。
はてさて、ダンテは、キノコによる洗脳から、人類を解放し、自由を取り戻すことができるのか?・・・
第一話は、ざっくり、そんな内容でした。
「脳」を使うことは、生化学的に苦痛
このお話は、もちろん創作のファンタジーなんですけど、どう考えても、現代を生きる私たちへの、風刺・皮肉です。
前に、知り合いのビジネス・コンサルが、お酒を飲みながら、
グチっていたんです。
「自分の頭で考えない人が、あまりに多い」
って。
彼は、講座で、人生のビジョンや、ミッションを見つけるためのワーク(=自分の頭で考える)を提供しているのですが、
”自分の頭で考えることをせずに、すぐに、人から答えを教えてもらおうとする人”が、すごく多いそうなんです。
私も、ふだん、個人セッションや、セミナーで、ディマティーニ・メソッド(=自分の頭で考える)を提供しているから、彼の言いたいこと、すごく、よくわかる。
「わかりません」
「できません」
「思い出せません」
と、”自分の頭で考えたくないときの常套句”を連発して、考えることに、強い拒否反応を示す人って、けっこう、多いんですよ。
それだけ、”自分の頭で考えることは、苦痛”なんですね。
人間の脳って、体重のたった2%の重さしかないのに、1日に、体全体の20〜25%ものエネルギーを消費しているんです。
それだけ、頭を使うっていうのは、生化学的にも、すごい労力なんですね。
誰にとっても、筋肉を動かすのって、すごく苦痛じゃないですか。
腹筋も、腕立ても、スクワットも、きついし、つらい。
だから、みんなすぐに、ラクな方に、逃げたくなる。
ついつい、ゴロゴロしながら、ポテチ食べちゃう。
自分の頭で考えることも、
これとまっまったく同じ。
「何をやりたいのか?」
「何が好きなのか?」
「何を実現したいのか?」
”自分の脳みそ”を酷使するのは、きついし、つらい。
宗教団体が儲かる本当の理由
だから、みんなすぐに、ラクな方に、逃げたくなる。
ついつい、「宗教」「会社」「占い」「自己啓発」「スピリチュアル」など、に、依存してしまう。
そういった”他人の脳みそ”に、自分がどう生きるかを決めてもらったら、すんごく、ラクだから。
地球上で最大の資産を持つ組織・団体のいくつかは、宗教団体だって、知っていますか?
あと、日本の「占い市場」は、世界最大の市場規模で、売り上げは、1兆円を超えているんですって。
つまり、みんな”自分の頭で考える(脳の神経細胞を酷使する)という、
生化学的な苦痛を、他人に依存することで回避したいんですね。
そんな風に、人は、つい、ラク(苦痛のない快楽)の方に流されてしまうもの。
頭にキノコが生えた奴隷
でも、実は、ここには、
すごく大きな落とし穴(苦痛)が隠されているんです。
だって、自分の頭で考えないのは、自由意志を、放棄することと、同じだから。
もし、あなたが、自分の頭で、自分の人生について考えないなら、他の誰かが、あなたの人生を勝手に決めてしまうことになる。
宗教の指導者や、占い師、
自己啓発やスピリチュアルの講師、
会社の上司や、親といった、権威ある人たちの、
「あなたは、○○をやるべきだ」
「あなたは、○○を好きになるべきだ」
「あなたは、○○を実現するべきだ」
という、外側の声(他人の価値観)に、従属して生きるようになる。
つまり、自分で考える力を放棄して、ラクな方に流されると、
”頭にキノコが生えて”、ただ、命令を、実行するだけの、奴隷になっちゃうということ。
こうやって、私たちは知らず知らずのうちに、キノコ(=権威者)に、支配・管理されて、自由意志を失っているんですね…。
ああ、えらいこっちゃ。
漫画の主人公の「ダンテ」は、「なんか、これって、おかしくね?」と、そのおかしさに気づいたけれど、
大昔の、イタリアの詩人・哲学者の「ダンテ」も、
”自由意志”を使って人間は、
人生の瞬間瞬間、善と悪を選び取り、人生を創造していく。
これこそが神から人間だけに与えられた特別な賜物であり、
人間たる所以(ゆえん)はこれによる。
って、『神曲』の中で、言っているです。
「いくら、脳みそを動かすのがしんどいからって人を人たらしめる、自由意志をそんなに簡単に、放棄しちゃうって、どうなの?」
「自分の人生について、自分の頭で考えないと、脳みそにキノコが生えるぞ」
漫画『菌と鉄』には、そんな皮肉と警告が込められているように思えてなりません。
(考えすぎ!?… 笑)
参考:
別冊少年マガジン2021年4月号
『菌と鉄』(片山あやか・著)*第一話は、無料で読めます
出典:
『ダンテ『神曲』における数的構成』(藤谷道夫・著)