自分を対象にワークするディマティーニメソッドのやり方
目次
自分へのディマティーニメソッド
ディマティーニ・メソッドには、
「他者を対象にワークするやり方」と、 「自分を対象にワークするやり方」があります。
けれど、現在、自分を対象にワークするやり方は、
ディマティーニ・メソッドのファシリテーターを養成するトレーニングと、
一部のファシリテーターの個人セッションでしか扱われていません。
その理由は、
”誰にとっても、自分のことを客観的に見ることは、難しいから”
です。
だから、他者へのワークと比べて、自分へのワークは、少し、難易度が高いんです。
Dr.ジョン・ディマティーニが講師をする「ブレイクスルー・エクスペリエンス」セミナーでも、
ディマティーニ・メソッド初体験の人は、自分を対象にワークしてはいけないことになっています。
けれど、ワークの難易度に比例するかのように、
自分へのディマティーニ・メソッドの効果は、素晴らしいものです。
このワークに深く取り組むことで、
「私が何をしたとしても、何をしなかったとして、
私は、愛に値する、価値のある存在だ」
と、ありのままの、自分を愛せるようになります。
ワークのやり方
「自分の愛せない部分」
自分にディマティーニメソッドするときは、
あなたが自分自身ついて
・もっとも悪いと思っている
・もっとも嫌だと思っている
・罪悪感や後悔、恥の気持ちを持っている
・自分は変わるべきと思っている
のは、具体的にどんなところ(特性や、行動)なのかを、リストアップしていきます。(列8)
・親に高額な学費を負担させたのに、大学を中退した
・信仰や家族の事情で、大好きな人との結婚をあきらめた
・浮気をして、離婚した
・仕事をせずに、収入がない
・親に借金の肩代わりをさせた
など、
自分の愛せない特性や行動(過去と現在)を、思いつく限りリストアップしていきます。
「透明性の法則」
次に、その自分の愛せない特性や行動を、
あなたが、「いつ」「どこで」「誰に」示し、
「誰が」見ていたかを過去と現在で見ていきます。(列9)
すると、あなたの周りの人たちも、
あなたの中に、その特性や行動があることを、みんな知っていることに気づきます。
つまり、あなたのそうした特性を、周りの人たちは、全てお見通しで、
決して、あなたは、そうした特性や行動を、人に隠せないことに気づきます。
これを「透明性の法則」といいます。
あなたは、透明な存在なので、自分の恥ずかしい特性や、行動は、他人からも丸見えなのです。
そのことに、気づくと、
自分の恥ずかしいところを、人に見せないように隠したり、
自分を大きく見せて、良く見せようとする行為には、
まったく意味がないことに気づきます。
するとあなたは、そのままの自分でいるしかなくなるのです。
「均衡の法則」
次に、自分の愛せない特性や行動が、
あなた自身に具体的にどのように役立ち、メリットになっているか?
あなたが、その特性や行動を示した相手(他者)に、
具体的にどのように役立ち、メリットになっているか?
ひとつ一つ見ていきます。(列10、11)
例えば、
・あなたが浮気をして離婚したことが、あなたの子供に
どのように役立ち、メリットとなっているか?
・あなたが大学を中退したことで、あなた自身と両親に
それぞれ、具体的に、どんなメリットを与えているか?
・あなたが奥さんに怒りの感情をぶつけることが
奥さんに、具体的などんなメリットを与えているか?
というようにです。
きっと、あなたは今まで、自分のそうした特性や行動に、
メリットがあるなんて、考えたこともなかったでしょう。
けれど、人間の持つすべての特性や行動というのは、
その人が自分の価値観を基準にして、
「良い・悪いの判断」(ジャッジ=裁き)をするまでは、ニュートラル(中立)なのです。
これを「均衡(バランス)の法則」といいます。
つまり、あなたの、どんな特性や、行動にも、デメリットと、同じだけの、メリットがあるということ。
だから、あなたが愛せない自分の特性や行動に、メリットがないのではなく、
メリットが見えていない(認識できていない)だけなのです。
だから、ファシリテーターのサポートを受けながら、根気よくワークをしていくことで、
自分の特性や行動のネガティブな面と、ポジティブな面の両方がわかるようになります。
「二面性の法則」
次に、あなたが、いつ、どこで、自分の愛せない特性や行動と、
まったく正反対の特性や、行動を、示しているか?
そして、あなたの中に、正反対の特性や行動があるのを誰が見て、知っているか?
を過去と現在で、見ていきます。(列12)
すると、あなたには、正反対の特性や行動が、まったく同じだけあることに気づきます。
誰もが、「優しさと冷酷さ」「謙虚さと傲慢さ」「勤勉と怠惰」「自立と依存」というように、
相反する特性、行動の両方を、量的に、まったく同じだけ持っています。
「優しいだけで、冷酷さの一切ない人」、「勤勉だけで、怠惰さの一切ない人」
というように、どちらか片方しか持っていない人というのは、存在しません。
これを「二面性の法則」といいます。
ディマティーニ・メソッドに深く取り組むことで、
あなたの中に、相反する両面の特性がバランスよく、存在してることに気づきます。
「シンクロニシティの法則」
次に、あなたが、愛せない特性や行動を示したまさにその瞬間に、
あなたは、どんなやり方で正反対の特性、行動を示していたか?
または、誰が、それを補う形で、正反対の特性、行動を、示していたか?
を見つけていきます。(列13)
すると、どの瞬間にも、ネガティブとポジティブが、同時(共時的)に完全にバランスしている、
という、驚くべき真実に気づくことができます。
これを、「共時性(シンクロニシティ)」といいます。
私たちの住むこの世界には、目には見えない、隠された秩序と、知性が存在していて、
ダイナミックに均衡を取ろうとする力である「愛」が、
いついかなるときも、私たちを包み込んでいるのです。
ディマティーニ・メソッドに深く取り組むことで、
「神の秩序」(Divine order)を、知覚・認識できるようになります。
「無条件の愛の法則」
次に、もし仮にあなたが、愛せない特性や行動とまったく正反対を示していたら、
あなたの自身と、周りの人に、具体的に、どんなデメリットがあったか?
を見ていきます。(列14)
つまり、あなたが、ネガティブに感じる特性、行動を示さずに、
まったく正反対の、理想的な自分であったら、どんなデメリットがあったか?
を見ていくのです。
自分がポジティブな特性や行動を示すことで、あなた自身と周りの人にデメリットがあるなんて、
あなたは、考えたこともなかったでしょう。
けれど、上にも書いたように、人間の持つすべての特性や行動というのは、
その人が自分の価値観を基準にして、「良い・悪いの判断」をするまでは、ニュートラルなのです。
ワークをしていくと、もし、仮に、あなたが正反対にポジティブな特性、行動を示していたとしても、
自分と周りの人たちに、まったく同じだけのデメリットがあったことに気づきます。
すると、あなたは、「私は今のままで、何一つ、変わる必要がない」と、気づきます。
何をしても、しなくても、自分が愛される存在であることが、
(頭ではなく)ハートで、腑におちてわかります。
そのとき、自分への愛と感謝を感じられるようになる。
そして、あなたの存在そのものが、「無条件の愛」であると、気づくのです。
ケーススタディ
「妻への罪悪感」
以前、私の個人セッションに来てくれた40代の男性、西村健吾さん(仮名)は、
奥さんに対して、とても強い罪悪感を持っていました。
彼は、何年も前に、職場の上司からのパワハラによって、うつ病になりました。
強い憂うつ感と、無気力のために、朝、ベッドから、起き上がれない。
彼は、医師からのすすめもあって、会社を休職することにしました。
しかし、彼のうつ病は、会社が定める休職期間では、良くなりませんでした。
収入が絶たれ、貯金を切り崩さないと、生活ができなくなりました。
彼には、当時、3才の娘がいました。
奥さんは、専業主婦として、子育てをしていましたが、
夫に代わって、家計を支える役割をせざるを得なくなりました。
彼の奥さんは、派遣会社に登録して、フルタイムで働きはじめました。
長時間、働けるように、娘は、保育園に預けることに。
奥さんのお母さんにサポートをお願いすることも増えました。
彼は、誰もいない家で、何もせずに、ずっと寝て過ごしていたそうです。
うつ病の症状だけでなく、妻一人に、家計を支える役目を押し付けたこと、
大切な娘と、義母に負担をかけていることに、強い罪悪感を感じ、
胸のあたりが押し潰されそうだったといいます。
彼は、ベッドの中で、何も、できない自分を
何ヶ月も、ずっと、責めていたのです。
その後、心療内科での治療の効果もあって、
彼は、仕事に復帰することができました。
けれど、ずっと、奥さんに迷惑をかけて、苦しめたこと、
娘に寂しい思いをさせてしまった自分のことが今でもどうして許せない。
そんなときに、ネットでたまたまディマティーニ・メソッドのことを知って、
私の個人セッションの受講を決めたといいます。
「うつ病のメリット」
個人セッションでは、
自分を対象にしたディマティーニ・メソッドに取り組みました。
うつ病で、収入がなくなって、奥さんを派遣で働かせたことが、
奥さんと、娘、義母に、具体的に、どんなメリットになったか?
どんどん見ていきました。
すると、彼が働けなくなったおかげで、
奥さんの「がん」を、早期発見できていたことに、気がつきました。
結婚後、ずっと子育てで忙しかった奥さんは、
もう何年も、健康診断を受けていませんでした。
ところが、派遣会社に登録して、働きはじめたことで、
ほぼ自動的に健康診断を受けることになったのです。
そこで、再検査になり、詳しい検査を受けたら、
「乳がん」が見つかったのです。
幸いなことに、奥さんの乳がんは、いちばん早期のステージ0。
がんを、いち早く発見できたおかげで、
手術で患部だけを切除し、乳房を温存することができました。
予後も良好で、現在は、定期検診を
受けながら、経過観察をしているといいます。
自分がうつ病になって、働けなくなったおかげで、
奥さんの、がんを、早期発見することができた。
そういうやり方で、奥さんの命を守っていた。
もし、うつ病にならずに、それまでと同じように働いていたら、
家計を支えるために、奥さんは、派遣で働く必要がありません。
もし、そうなっていたら、健康診断を受けることもなく、
がんを早期発見することは、できなかった。
もし、彼が、うつ病にならなければ、
奥さんの、がんは、見過ごされたまま進行し、
発見できたときには、より深刻な状況になっていた可能性がある・・・。
彼は、自分がうつ病になって、無収入になることで、
いちばん大切な奥さんの命を守っていたのです。
「何も変わる必要がない」
さらに、以前よりも、奥さんと対等な関係性になれていることにも気づきました。
以前の、奥さんは、
専業主婦として、家事と育児だけをしている「自分には、なにも価値がない」と思っていました。
社会で人の役に立てず、お金を稼がない自分を強く恥じていたのです。
だから、奥さんは、外で仕事をして、きちんとお金を稼いでくる夫に、
引け目を感じ、自分を低く見ていました。
それが、彼ら夫婦に、上下の関係性をつくっていたのです。
夫である彼が、支配的に振る舞い、
奥さんは、それになんでも従う、主従関係のようになっていました。
ところ、彼が、うつ病になって収入がなくなったことで、
その関係性が、逆転したのです。
奥さんが派遣で働いて、お金を稼ぐようになると、
彼は、謙虚になって、奥さんへの支配的な振る舞いをやめました。
自ら進んで家事をしたり、子供の面倒を見るようになったのです。
そして、以前よりも、奥さんに感謝の気持ちを持てるようになって、
奥さんを、尊重し、二人は、対等な関係になることができていたのです。
もし、彼がうつ病にならず、以前と同じような生活を続けていたら、
奥さんは、働きに出て、自分でお金を稼ぐということできません。
もし、そうなっていたら、奥さんの
「自分には、なにも価値がない」という、認識は、変わらないのです。
そして、夫に引け目を感じ、自分を低く見て、
夫に従う、関係性がずっと続くことになります。
私は、彼に、
「もし、うつ病にならずに、それまで通りに働いて、お金を稼いでいたら、
奥さんとの関係は、今、どうなっていますか?」
と、質問しました。
すると、彼は、
「離婚することになっていたと思います」
と、答えたのです。
実は、彼がうつ病になる前、二人の関係は、すでにあまり良くなかったのです。
彼が、横暴に振る舞い、奥さんがそれを受け入れていたことで、
2人は、対等な夫婦ではなかった。
だから、奥さんは、本音も、感情も、抑圧して、
大きなフラストレーションを溜め込んでいました。
もし、彼がうつ病にならずに、その状態がずっと、続いていたら、
二人の夫婦関係は、遅かれ早かれ、破綻していたのです。
もし、そうなっていたら、一人娘に、もっと寂しい思いをさせていたことになる。
私は、彼にこう、質問しました。
「つまり、あなたは、うつ病になることで、大切な奥さんの命を守ったのですね?
そして、奥さんの、苦しみをつくっていた
「自分には、なにも価値がない」
という、無価値感から、救い出してあげたのではないですか?
奥さんがあなたと対等な関係性になれるように、
あなたは、わざと、自分を低くしたのですね?
そういう方法で、あなたは、大切な奥さんと、
娘を守っていたことがわかりますか?
今まで、そのことが見えていなかっただけではないですか?
でも、今は、それが見えますか?」
彼の目から、大粒の涙が溢れました。
そのとき、彼の、罪悪感が、すっと消えていきました。
はじめて、彼は、自分に愛と感謝を感じたのです。
彼のハートが大きく開いたのがわかりました。
私は、続けて、質問しました。
「もし、ここに魔法の杖があって、
過去に戻って、うつ病で働けない、自分を、
あなたの好きなように変えられるとしたら、
どんな風に変えたいですか?」
すると、彼は、
「いえ、僕は、まったく何も、変わる必要がありません」
と言いました。
「あなたが何をしたとしても、何をしなかったとしてもあなたは、愛される存在です。
愛だけが真実です。それ以外は、幻想です。
あなたは、24時間、愛に包まれています。」
ーDr.ジョン・ディマティーニ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
飛田貴生