「私には価値がない」という心理 無価値感の世代間連鎖
私には、10代の頃から、
「自分には価値がない」
という感覚が、ずっとありました。
「こんな自分は愛されるはずがない」
「自分は人よりも劣った無価値な存在だ」
物心ついた頃から、
ずっと、そういう感覚が私の中にあったんです。
どうして、そういう無価値感を持ってるのか、
当時は理由がわかりませんでした。
でも、今ふりかえると、
「私には価値がない」という感覚は、
”母との関係”
から来ていたことがわかります。
目次
コントロールする母親
母は、私に過剰に干渉する人。
自分の考えを押し付けて、
私をコントロールしようとする人。
いちばん衝撃だったのは、
私の一人暮らしの部屋の合い鍵を勝手に作り、
留守の間に、冷蔵庫や布団、カーペット、
カーテーンを買い替え、
母の好みに、模様替えしてしまったこと。
家に帰ったら、
巨大なファミリー用の冷蔵庫が
キッチンに「どん」と置いてあって、
中に大量の食料が詰まっていたのです。
(ある意味、ホラーです 笑)
母は、私が幼い頃から、
私の気持ちをまったく無視したような
行動を繰り返していました。
「やめてほしい」
「放っておいてほしい」
と言っても、母は、私の言うことを聞いてくれない。
私の気持ちを無視してやりたい放題。
母は、自分の欲求を満たすことが優先で、
私の気持ちを考えていない。
まったく、「尊重されていない」
「大切にされていない」と感じました。
そういうことが繰り返されているうちに、
私は、いつの間にか、
「親から大切にされない自分には価値がない」
という思い込みを持ちました。
そして、自分の欲求を満たすために、
私を自分の思い通りにしようとする母に、
強い怒りと嫌悪感を持つようになったのです。
これが、私の、
「自分には価値がない」
という思い込みの起源。
私を愛してくれない父と母
一方、私の母は、幼少期に、
私とは”まったく逆パターンの経験”をしています。
母の実家は、長野県の山奥の雪深いところ。
母は5人兄弟のちょうど真ん中で、2人の姉と2人の弟がいます。
母の両親は、跡取りである、2人の弟だけを特別扱いし、
末娘の母は、兄弟の中でいちばん冷遇されました。
父親(私の祖父)は、腕のいい建具職人だったそうですが、
5人の子供を養うには、稼ぎが足らず、
お腹いっぱいご飯を食べさせてもらえたのは、2人の弟だけ。
母は、食べるものがなくて、
いつもお腹を空かせていたといいます。
高校に行かせてもらえたのも、弟たちだけで、
母は、中学を卒業すると、”くちべらし”のために、
すぐに集団就職で、神奈川の会社に就職させられました。
母の口ぐせは、
「私は、親から何かしてもらったという記憶が一切ない」
というもの。
母は中学を卒業して、すぐに就職させられたのに、
一つ下の弟は、国立大学を出て、「博士」(ドクター)を取っているし、
一番下の弟も大学を出て「一級建築士」になっている。
これだけ見ても、母と弟たちの、扱いの違いがわかります。
けれど、母は、就職してから、
実家の両親にずっと仕送りを続けていました。
それも、両親が亡くなるなるまで、50年以上も。
母は、ことあるごとにこんな話をします。
「じいさん(母の父)は、こたつの中で、
私の仕送りの封筒を握りしめながら死んでいたんだって。
じいさんは、”私が、いちばん親孝行だった”って、
死ぬ前に言っていたんだって。」
と。
お金をあげるときだけ、両親は、母を大切に思い愛してくれた。
だから、母は、「私は、親から愛されていない」
という欠乏を埋めるために、半世紀もの間、
親に仕送りを続けていたんです。
母も、「私には、価値がない」
という、強い無価値感の持ち主でしたが、
その起源も、実は、”親との関係”から来ていた。
兄だけを大切にする父
そして私の奥さんも、
「私には価値がない」
という強い無価値感の持ち主。
奥さんには2歳年上のお兄さんがいます。
奥さんのお父さんは、
「男は仕事、女は家庭」
という考えの人。
お兄さんは、大学受験で浪人することも、
一人暮らしすることも許してもらえたのに、
奥さんは、それを許してもらえませんでした。
本当は、すごく行きたい大学があったけれど、
自分の偏差値では現役合格は難しいし、
一人暮らししないと、通えない地域。
お父さんにいくら、お願いしても、
「由起子は女の子なんだから、
そこまでして大学に行く必要はない」
と、浪人することも、一人暮らしすることも、
絶対に許してくれません。
「お兄ちゃんは、自分の行きたい大学に、
浪人して、一人暮らししてもいいと言われているのに、
お兄ちゃんだけ、ずるい。」
そう思っても、お父さんの考えは、
最後まで変わりませんでした。
結局、浪人することはあきらめて、
あまり行きたくなかったけれど、
合格した大学に行くことに。
それで、毎日、実家から大学まで、
”片道2時間半”かけて通うハメになったのです・・・。
「お父さんは、お兄ちゃんをすごく大切にしているけど、
私のことはぜんぜん大切にしてくれない。
私は兄ちゃんよりも劣っているんだ。」
これが、奥さんの
「自分には価値がない」
という思い込みの起源。
奥さんの強い無価値感も、
”親との関係”から来ていた。
このパターンは、親が弟を特別扱いして、
自分は高校にも行かせてもらえなかった私の母とまったく同じ。
子供に依存する母親
そして、私のディマティーニ・メソッドの
個人セッションやセミナーにも、
「私には価値がない」
という強い無価値感で悩んでいる人が
次から次へと、やって来ます。
例えば、先日、個人セッションに来てくれた
中田みゆきさん(仮名)も、
「私には、価値がない」という
強い無価値観の持ち主。
みゆきさんは、小さい頃から、
”お母さん専属のカンセラー”
をやらされました。
みゆきさんのお母さんは、ずっと一人でしゃべり続けて、
みゆきさんの話をぜんぜん聞いてくれない。
お母さんは、お父さんとの関係があまり良くなくて、
感情的にも不安定なところがあったので、
何かあると、みゆきさんのことを、
”感情のはけ口”として使いました。
みゆきさんは、いつもお父さんや
他の人の悪口をお母さんから聞かされ、
自分の話は、何も聞いてもらえない。
そういうことが繰り返されているうちに、
「私の話を聞こうとしないお母さんは、
私に興味がなくて、私を愛していないんだ。」
と思うようになったのです。
これが、みゆきさんの
「自分には価値がない」
の起源。
無価値感の起源は「親との関係」
みゆきさんの強い無価値感も、
”親との関係”から来ていた。
私も、母も、奥さんも、みゆきさんも、
「私には価値がない」
という強い無価値感を持っていて、
その起源は、”親との関係”から来ていた。
そして、もしかしたら、この記事を読んでいる、
あなたにも当てはまる話かもしれません。
私たちが、みんな同じパターンを持っているのは、
偶然なのでしょうか?
集合的無意識
「私たちひとり一人(個人)は、
無意識の深いところでは、みんな一つにつながっている」
と言われています。
これは、心理学者のカール・ユングが提唱した
「集合的無意識」という概念です。
英語で「個人」を意味する「Individual」という言葉は、
「分離した、別々の」という意味がある「dividual」に、
否定の意味がある「in」を付けたもの。
つまり、「個人」(In-dividual)は、
「分離していない、別々でない」という意味。
だから、私も母も、奥さんも、みゆきさんも、そしてあなたも、
深い部分では、みんなつながっていて、分離していない。
そして、実は、「私には価値がない」という想念は、
みんながつながっている、”集合的無意識の領域にある”のです。
だから、
私やあなたが、自分の個人的な悩みだと思っていた
「私には、価値がない」という無価値感は、
本当は、”私たちみんなのテーマ”だったということ。
みんなが同じパターンだったのは、偶然ではないのです。
親から子へと伝染するウイルス
そして、「私には、価値がない」という想念は、
例えるなら、”コンピュータウイルス”のようなもの。
集合的無意識にある、このウイルスは、
私たちが、幼少期・思春期になると、
”親との関係を通じて感染し、発現(顕在化)する”
ように、プログラムされています。
私や母、奥さん、みゆきさんの例のように。
まるで、「私には価値がない」という想念が、
”親から子へ、子から孫へ”と、
次々にコピーされて(感染して)いくかのよう。
だから、「私には価値がない」という想念が、
”親との関係”から来ていると言っても、
親のせいでも、親が悪いわけでもない。
お母さんは、お婆さんからコピーして、
お婆さんは、ひいお婆さんからコピーして、
ひいお婆さんは、ひいひいお婆さんからコピーして・・・
ということが、ずっと繰り返されてきただけ。
そして、その起源を辿れば、
私たちの集合的無意識に行き着くのです。
自己犠牲の原因
ただ、このウイルスが厄介なのは、
自己破壊のプログラムがセットになっていること。
「私には価値がない」という想念は、
自分よりも他人を優先する傾向や、
自分を犠牲にして相手に奉仕する傾向、
自己攻撃・自己破壊の傾向
の原因になっている・・・。
自分の価値を証明するために、取り憑かれたように、
仕事やキャリアで成功しようとする人も、
嫌なことを嫌だと言えず、いつも我慢してしまう人も、
家族や他人に尽くして、疲れ果ててしまう人も、
自分を傷つける”だめんず”とばかりと付き合ってしまう人も、
アルコールや薬物などの”毒物”を過剰に摂取してしまう人も、
心の中で、自分を傷つける言葉を言い続けている人も、
みんな、「私には価値がない」という想念を持っていて、
それが、「自己犠牲」や、「自己破壊」をつくっている・・・。
そして、こういった、私やあなたが自分の個人的な悩み・問題
だと思っていたことは、実は、”私たち全員のテーマ”だった・・・。
だから、本当は、「私には価値がない」という無価値観は、
”あなた一人の問題ではない”のです。
「私には価値がない」から自由になる
では、どうしたら、「私には、価値がない」という、
みんなが感染しているこのウイルスを除去できるのでしょうか?
その答えは、実は、
”親との関係を癒す”
ことにあります。
この世界に子供を愛していない親など、
本当は一人も存在しません。
たとえ、子供に暴力をふるったり、育児放棄をしたり、
近親相姦したりするような親であったとしてもです。
私は、ディマティーニ・メソッドで、
今までそういう事例をたくさん見てきましたが、
一見、悪魔のように思える親の行為も、
より高い、”神様の視点”から見てみると、
すべて、子供を愛するがゆえの、
”無条件の愛”
であったことがわかります。
親は、本当に子供を愛しているから、
たとえ、悪魔と思われても、憎まれても、恨まれても、
悪役を引き受けることができる。
ディマティーニ・メソッドに深く取り組むと、
親の”無条件の愛”が浮かび上がってきて、
はっきりと認識できるようになるのです。
すると、暴力をふるったり、
無視・放置をしたり、近親相姦をしたり、
自分に酷いことをしたと思っていた親に、
心からの愛と感謝を感じることができるようになる。
これは頭(思考)では、決して理解できないことだけれど、
ワークをするとそれがハート(心)でわかるのです。
目の前のクライアントさんが、ずっと何十年も憎んでいた親に、
愛と感謝を感じ、涙を流すその場面を、私は、これまで何度も見てきました。
そして、その瞬間に、
本当は、もうすでに自分が、親から深く愛されていたことに気づきます。
何をしても、しなくても、”自分は価値ある存在である”とはっきりわかる。
「無条件の愛」という魔法
私は、クライアントさんがこの気づきに至ったときに、
よく「ハリーポッター」の話をします。
児童小説『ハリー・ポッター』の主人公、ハリーは、
闇の帝王ヴォルデモートの”死の魔法”を受けて、
唯一、生き残ることができました。
なぜ、ハリーは、最強の魔法使いの死の呪文で死ななかったのか?
それは、母のリリーが、ハリーに”守護の魔法”をかけていたから。
”母の守護”とは、それほど強力な守りなのです。
あのお話は、そのメタファー(隠喩)なのだと思います。
”親との関係を癒す”ワークに深く取り組むと、
その”守護の魔法”が、今までずっと自分を守ってくれていたことがわかる。
そのことに気づいた瞬間に、無条件の愛で、内側が満たされ、ハートが大きく開くのです。
そして、気がついたら、
「私には価値がない」という無価値感がなくなっている・・・。
先日、個人セッションにきてくれたクライアントのみゆきさんも、
そういう体験をした一人です。
みゆきさんの体験談
こんばんは。
先日は有難うございました!!!
ディマティーニメソッドを受けて、
「お母さんが私のことを愛してるんだなぁ」
と体感しました!
「中庸(バランス)の世界」「無条件の愛の世界」を体験するというのは、
こういうことなんですね!
お母さんは、自己破壊の傾向を持っている私を守ってくれていたんですね。
飛田さんが、それ(自己破壊)は、代々、受け継いでいるただのパターン
だって教えてくれたのも、とてもしっくりきました。
まさに、それは、私の家系のクセだったのだと思います。
ワークの後、周りの人への変な遠慮がなくなり、自尊心が高まった気がします!!
普通に考えたら当たり前ですが、自分が苦しいのに無理に頑張ったり、
自分のことを後回しにして、他人を助けようと手を差し伸べることに、
違和感を感じはじめました。
自分のことを愛おしく思えるようになって、
身体が疲れていたら休むことも、自分を大切にすることも、できるようになりました。
あと一番、感じたことは「私って結構すごいんだ」ということです。
「じわ〜」と自分の価値を信じられる、感覚になりました。
そうしたら、「今まで私は、何をやっていたんだろう?」
「どうして自分のことをもっと大事にできなかったんだろう?」
と、狐につままれたみたいな感じです (笑)
今回は、有難うございました^^
–体験談は、ここまで–
「一人」が変わると「全体」が変わる
みゆきさんのケースは、
親との関係を癒して「私には価値がない」
という無価値感と、
「自己犠牲・自己破壊のパターン」
を解消したとてもいいお手本です。
これまでにディマティーニメソッドを、
たくさんの人に提供してきたけれど、
こんな風に、親との関係を癒して、
”自分は愛される価値のある存在なんだ”
と気づいた人は、人生が大きく変わる体験をしています。
もちろん、みんな、それをカンタンにできるとは言いません。
なぜなら、親との関係に向き合うことは、
誰にとっても、逃げたい、避けたい、触れたくないことだから。
けれど、みゆきさんのように、知恵と勇気を持った人たちが、
今、どんどん目覚めようとしている。
そして、そういう少数の「個人」が、私たち「全体」の意識を、
今、大きく変えようとしているのです。
今日のメルマガは、お母さんを対象にディマティーニ・メソッドに取り組んだ、
クライアントのみゆきさんにインスピレーションを受けて書きました。
飛田貴生