トラウマセラピーの真の目的とは? 「アウシュビッツ」はまだ存在する
「ホロコースト生存者」のトラウマ
私の先生で、人間行動学の世界的権威の、
Dr.ジョン・ディマティーニは、
ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)で
生き残った人たちにディマティーニ・メソッドを
提供したことがあるそうなんです。
その場所は
ホロコーストの歴史的資料なども展示されている
場所で、ヒトラーの写真もあったそう。
ホロコーストを生き残った人たちは
ヒトラーの写真を見ただけで、
いまだに恐怖による「凍りつき反応」
を示していたといいます。
凍りつき反応とは、
ヘビに、にらまれたカエルが、
恐怖で体がすくみ、動けなくなる状態のこと。
トラウマ(PTSD=心的外傷後ストレス障害)
がある人は、その出来事を思い出す、
トリガー(引き金)が引かれると、
フラッシュバック(トラウマの追体験)
が起きて、凍りついたように、
体が硬直してしまうのです。
もう、終戦から、70年以上も時が経っていて、
ヒトラーも死んで存在せず、
彼らを決して傷つけることはないというのに。
でも、いまだにユダヤ人の人たちは、
ヒトラーに対する恐怖に、
人生を支配されていたそうなんです。
つまり、彼らはまだ
「アウシュビッツ強制収容所」
に囚われたままだったのです。
「ヒトラーの恐怖」からの解放
それで、Dr.ディマティーニは、
ユダヤ人の人たちに、ヒトラーを対象にして
ディマティーニ・メソッドをやっていった
そうです。
でもそれは、「ヒトラーやナチスによる、
暴力的な行為を肯定する目的だったわけでない」
と言っていました。
「もう、存在しないヒトラーの幻影
による恐怖から、ユダヤ人の人たちを、
解放する目的でワークをした」というのです。
そして、すべてのワークが完了したとき、
ユダヤ人の人たちは、70年以上も、囚われていた、
恐れから自由になったそうなんです。
幼少期の「親との関係」のトラウマ
私のところには、幼少期に親との関係でできた
トラウマを癒したくて、
ディマティーニ・メソッドを受けにくる人が
少なくありません。
[幼い頃に、お父さんが
自分とお母さんを捨てて出ていって、
その後、一度も会いに来なかった]
[お父さんは、お兄ちゃんだけを
かわいがって私には、ほとんど無関心だった]
[お母さんが、ヒステリー(精神錯乱)
になって私を怒鳴りつけることがよくあって
恐ろしくてしかたなかった]
幼い子供は、親や養育者の
庇護がなくては生きていけません。
だから、幼い頃に、
親からの拒絶や無関心を体験すると、
それを、”命の危機”と、捉えて
トラウマなってしまうことがよくあるんです。
トラウマが人生を支配する
そうした、幼い頃にできたトラウマが
大人になってからも、その人の人生を
知らず知らずのうちにコントロールしています。
[人から怒りを向けられることが怖くて
人の顔色をうかがってばかりいる]
[人から見捨てられることが怖くて
交際相手につい執着や依存をしてしまう]
[ロボットみたいに、感情がなくて、
自分がどうしたいのか、わからない]
というように。
もう、何十年も時が経っていて、
親の庇護がなくても、親から拒絶されても、
一人で、生きていくことができるというのに。
でも、いまだに、彼らは、幼い頃に体験した
”親から愛されなかったという痛み”に、
人生をコントロールされているんです。
つまり、幼い頃にできたパターンに、
大人になった今でも、囚われているという
ことです。
「親から愛されなかった痛み」の解放
だから、ディマティーニ・メソッドを使って
幼少期の親との関係のトラウマを癒していきます。
でもそれは、
親が子供にした行為を、肯定したり、
親に感謝する目的でするのではありません。
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トラウマがつくった古いパターンから
自分自身を解放し、自由になることが
親との関係を癒す真の目的です。
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すべてのワークが完了したとき、
何十年も、囚われていた、
”親から愛されなかった痛み”と、
その痛みがつくったパターンから、
自由になることができるんです。
「トラウマとは、自分と分離すること。癒しとは、再び、自分とつながること。」
ーガボール・マテ(ホロコースト生存者、トラウマの世界的権威)
いつもお読みいただきありがとうございます。
飛田 貴生