ドクター・ディマティーニが教える「怒らない人」の心理とデメリット
目次
怒りの感情を抑圧する人
最近、私の個人セッションやセミナーに、
怒りなどの、”ネガティブな感情を押さえ込んでしまう傾向がある方”
が、よく来られます。
ディマティーニメソッドでは最初に、
「あなたがもっとも嫌悪し、怒りや憤りを感じている人は誰ですか?」
と質問するのですが、そういう傾向のある人は、
「私には嫌いな人なんていません」と、言うのです。
でも、そう言われてしまうと、
ディマティーニメソッドするのに困っちゃう・・・。
実は、こんな風に答える人というのは、
「怒りなどの、ネガティブな感情を感じてはいけない」と、(無意識で)強く思っていて、
ネガティブな感情を持つこと(表現することも)に、”罪悪感”を感じてしまうのです。
だから、怒りや、憤り、嫌悪感など、ネガティブな感情が出てきた瞬間に、
それを抑え込んで、なかったことにしてしまう。
ですから、本当は、嫌いな人がいない、怒りを感じている人がいない(=ネガティブに感じる人がいない)
のではなく、ネガティブな感情を無意識に、抑え込んでいて、それに気づいていないだけなんです。
最近、個人セッションやセミナーをしていて、
そういう人、すごく、多いなーと感じます。
ポジティブ信仰(エクソシスム)
そこで、先日、来日していたジョン・ディマティーニさんに、
そういう傾向がある人に対して、どのようなサポートをしたらいいのか、
どんなワークをするといいのか、直接、質問してみました。
ディマティーニさんによると、
「権力者の信念が、ネガティブな感情を持たないようにさせている」
と言います。
ここでディマティーニさんが言っている、権力者とは、
宗教的な指導者や、メンター的なポジションの人のこと。
自己啓発やスピリチュアルを教えている講師、作家などのも含みます。
そして、そういう指導者のほとんどが、
いわゆる”ポジティブ思考”を教えています。
ディマティーニさんは、現代のキリスト教のメインコンセプトは、
「悪魔を取り除いて、救世主(メシア)を求める、エクソシスム」
であると言っています。
カンタンに言うと、
”人生から、悪いことを、一切なくして、良いことだけにする”
というコンセプト。
これは、まぎれもないポジティブ思考です。
そして、多くの自己啓発やスピリチュアルのコンセプトも、ほとんどが、これ。
「ポジティブな言葉だけを使いましょう」とか、
「いつもありがとうを言いましょう」とか、
「利他的になりましょうと」とか、
つまり、「善人」「いい人」「人格者」になりましょうという教え。
ポジティブは「報酬」ネガティブは「罰」
そして、そういう”いい人教”を説いている権力者を信奉してしまうと、
人を悪く思ったり、怒りを表現するなんて、「ダメ。ゼッタイ。」になってしまう。
そして、怒りなどのネガティブな感情を感じるだけで、
自分を恥じたり、罪悪感を感じてしまうのです。
逆に、ポジティブな感情を感じるときは、自分を誇らしく思う。
つまり、ポジティブな感情は「報酬」で、ネガティブな感情は、「罰」であるということ。
だから、「良い人になろう!」と教える、権力者の信念を取り入れてしまうと、
自分の中に、怒りや、嫌悪感、憤りがうまれた瞬間に、それを抑え込み、
なかったことにするということを、やってしまうのです。(無意識に)
ちなみに、このパターンは、
宗教(厳しい戒律があるもの)が絶対的な力を持っている国や地域の人に多いみたいです。
日本は、(他の国と比べて)それほど宗教の力が大きくないので、
このパターンの人は、それほど多くないと、個人的には思います。
過去のトラウマ体験
そしてもう一つ、
”ネガティブな感情を抑圧する傾向をつくる原因”
があります。
それは、過去のトラウマ的な出来事。
例えば、幼少期に、親から感情的に見捨てらてたり、
関心を向けてもらえなかったり、暴力を受けたり・・・。
その他にもいろいろなトラウマがありますが、
”とても大きな心の痛み”を体験すると、
それ以降、”感情のスイッチをオフ”にしてしまう人がいます。
ネガティブな感情を感じないように、心を麻痺させてしまうのです。
鎮痛剤のロキソニンや、ボルタレンを飲むと、
痛みを脳に伝える神経伝達が阻害され(麻痺して)、
まったく痛みを感じなくなります。
それと同じように、過去に大きなトラウマを体験している人は、
精神的な痛み(=ネガティブな感情)を、
無意識のうちに感じないように”切ってしまっている”です。
そうやって、自分を守っているのです。
ちなみに、このパターンは、日本人にすごく多いように思います。
私の個人セッションやセミナーに来てくれた人たちは、ほとんど、こっちでした。
感情を抑え込む2つの理由
ポジティブ教を信奉する人は、
「人生を良いことだけにしたい」と思っているし、
(ポジティブへの執着)
過去に大きなトラウマを経験している人は、
「人生から悪いことを消し去りたい」と思っている・・・。
(ネガティブへの嫌悪)
そしてその結果、どちらも、
”怒りなどのネガティブな感情を抑え込む”
とうことをしていたのです。
これが、「私には嫌いな人なんていません」の仕組み。
ネガティブ感情を抑圧する代償
ちなみに、
「ネガティブな感情を感じないことのどこが問題なの?
それって、素晴らしいことじゃない?」
と、思う人もいるかもしれません。
たしかに一見そのように思います。
けれど、本当は、
ネガティブな感情を抑圧することには、
とても大きな代償が伴うのです・・・。
自分と他人を切り捨てる
一つ目の代償は、
「自分と他者を切り捨ててしまう」こと。
これは、ディマティーニさんが真っ先に言っていたこと。
自分は、ポジティブだけの人生にしようとしても、
周りの人たちは、そんなことはありません。
人の悪口ばっかり言ってる人もいれば、
感情のコントロールをせずに、すぐ怒りだす人もいる。
つまり、世の中は、ネガティブでいっぱい!
だから、そういう大多数の人たちと対立しないように、
避けて生きなくてはならい。
つまり、他者をすぐに切り捨ててしまうということ。
怒りなどのネガティブを表現する人を片っ端から、
”エンガチョ”してしまうのです。
さらに、ポジティブだけの人生にしようとしたら、
もう片側の自分(ネガティブな自分)も、切り捨てないといけない。
ディマティーニさんは、
「片側だけ(ポジティブだけ)の人生にしようとすること自体がストレスではありませんか?
他者と対立しないように避けることもストレスではないですか?
自分を愛せるようになるために、もう半分の自分を切り捨てていませんか?」
と言っていました。
また、
「外側(他者との)の対立を避けると、内側(自分との)の対立が起きる。
”ネガティブな感情がないように見える”(見せている)人ほど、実は、”内側にものすごくネガティブな感情を持っている。”」
とも。
つまり、ポジティブだけの人生にしようとして、
いつも「明るく」「笑顔」で、「ありがとうを言って」いる人
の内側では、強い葛藤(内側の対立)が起きていて、
自己否定・批判、無価値観、劣等感、罪悪感、恥といった
ネガティブな感情が渦巻いているのです。
ポジティブだけの人生にしようとすればするほど、
実は、ネガティブなことが増えていた・・・。
この皮肉は、ちょっと、笑えません。
病気になる
二つ目の代償は、
「病気になる」こと。
カナダ・バンクーバーの医学博士、ガボール・マテさんは、
『身体が「ノー」と言うとき―抑圧された感情の代価』(日本教文社刊)の中で、
表現せずに抑圧した怒りなどのネガティブな感情が、「関節リウマチ」や「全身性エリテマトーデス」などの「自己免疫疾患」、
「アルツハイマー病」「がん」「アトピー性皮膚炎」の原因になっていると言っています。
以前、知人のカイロプラクティックのドクターが、
抑圧した感情は、骨や関節、筋肉に蓄積されると教えてくれました。
そして、その溜め込んだ感情が体のエネルギーの流れを阻害し、病気をつくっていると言うのです。
実は、「ゴクッ!」と飲み込んだ怒りや、憤り、不安、恐れは、消えて無くなることはなく、
体の中に、どんどん蓄積されていた・・・。
これ、「毒」をずっと体の中に持っているようなもの。
タバコやお酒の飲み過ぎも体に悪いけれど、
ネガティブな感情の飲み過ぎも、そうとう体に良くないのです!!
ポジティブな感情も感じない
三つ目の代償は、
「喜びも感じない、やりたいこともわからない」こと。
ネガティブな感情を抑圧して、
「怒り」や「恐れ」「不安」などを感じなくなると、
それって、一見、素晴らしいことのように思います。
でも、そういったネガティブな感情を感じる「心の部分」は、
”反対の感情を感じる部分”でもあるのです。
反対の感情とは、「喜び」や「安らぎ」「楽しさ」などのポジティブな感情のこと。
つまり、ネガティブな感情を抑圧して感じないようにしてしまうと、
ポジティブな感情も感じなくなっちゃう!!
これ、意外とみんな気づいていないんですが、
由々しき問題ですよ!!
だって、それじゃ、もはやAI、ロボットですから。
さらに、感情には、
「好き・嫌い」「やりたい・やりたくない」(これがそもそも感情)
を判断するための役割もあるので、それをオフにしてしまうということは、
自分が何が好きなのか、何をやりたいのかも、わからなくしてしまう。
「ここはドコ? 私はダレ?」状態ですよ。
感情をオフにすることは、自らすすんで、”記憶喪失”になるようなものなんです。
「自分のやりたいことがわかりません、好きなことがわかりません」
という人は、ここが原因であることも多いんです。
ちなみに、私のクライアントさんでもそういう方が
いらっしゃるんですが、表情がほとんどないんです。
お話していても、”体の中にいない感じ”がするんです。
それで、ディマティーニメソッドをやっていくと、
表情(表に現れる感情)が戻ってきて、存在感も戻ってくる。
それで、自分の好きなこと、やりたいことも、思い出すのです。
「おかえりなさい!!」みたいな感じです。
ディマティーニメソッド活用法
最後は、ディマティーニメソッドを具体的に、
どう活用するか、というお話。
恥、罪悪感、自己否定、自己嫌悪の解消
一つ目は、
「自分自身を対象に、ディマティーニメソッドのAB面を行う」こと。
ディマティーニさんのおすすめは、まず、これ。
人生をポジティブだけにしたいと思っている人は、
他者(ネガティブを表現する人たち)との、対立を避けようとするので、
内側の対立が起きていることが多い。
だから、内側に、自己否定・批判・無価値観、劣等感、罪悪感、恥を、
強く持っている場合が、ほとんど。
まずは、これをメソッドで解消していくといいとのこと。
自分の嫌いな特性(悪い、ダメと思っていること)と、
好きな特性(良い、素晴らしいと思っていること)を
すべてリストアップして、AB面のすべての列をワークしていきます。
そうすると、
悪い・ダメと思っていた自分の特性が、
自分と他者にすごく役に立ち、メリットになっていたことがわかる。
良い・素晴らしいと思っていた自分の特性が、
自分と他者にすごく大きなデメリットになっていたことがわかる。
すると、
「ネガティブを受容」して「ポジティブへの執着を手放す」ことができる。
その結果、自分を裁かなくなって、
自己否定・批判・無価値観、劣等感、罪悪感、恥も解消されるのです。
「自分を裁く理由を持たないものは、他者を裁く理由も持たない。」
これ、誰の言葉か忘れちゃましたが、
自分を裁かないと、人も裁かないので、
他者を切り捨ててしまうというパターンも同時に解消されます。
自分の中の「他人の価値観」を除去する
二つ目は、
「権力者を対象に、ディマティーニメソッドの”A面”を行う」こと。
あなたにいつもポジティブでいるように教えた
「権力者」(あなたが尊敬、または、崇拝している指導者、メンター)は誰でしょうか?
他者を上に見上げたり、崇拝すると、
相手の価値観の方が自分のものよりも、優れていると思い込み、
相手の価値観を自分の中に取り入れて、その人のように、自分を変えようとしてしまいます。
でも、”誰も、自分以外の誰かになることなんて、絶対にできない。”
なので、「なぜ、私はこの人みたいになれないんだろう?」と、
相手の価値観で自分を裁く、ということをやってしまうのです。
あなたが崇拝し、夢中になっているその人の、
好きな特性(良い、素晴らしいと思っていること)を、ぜんぶリストアップして、
A面のすべての列をワークしていきます。
そうすると、
自分の中に、侵入を許してしまった、他人の価値観(権力者の信念)を、
クリーニング(除去)することができる。
また、極端なポジティブ思考が改善される。(ポジティブへの執着の解消)
そうすると、相手のようになれない自分を裁くこともなくなるし、
ネガティブな感情を感じることに、恥や罪悪感も持たなくなる。
(*このワークのあとで、尊敬している人の嫌いな特性をリストアップしてB面のワークすると
さらに効果的。)
過去のトラウマを癒す
三つ目は、
「過去のトラウマを対象にディマティーニ・メソッドの”B面”を行う」こと。
まず、
ネガティブな感情を抑圧するきっかけになった過去のトラウマが何かを考えます。
例えば、それは、幼少期に、母親に精神的に見捨てられたと感じたことかもしれないし、
母親に精神的に依存されて、大人の役をやらざるをえなかったこと
(いわゆるアダルトチルドレン)かもしれない。
そのトラウマの原因になっている人(上のケースなら母親)を特定して、B面のワークをしていきます。
そうすると、
実は、ネガティブに感じていたことは、自分のこれまでの人生にとても役立っていて、
多大なメリットがあったことがわかります。
そうすると、ネガティブに感じていたことに対する認識(ものの見方・捉え方)が変化して、
”ネガティブなことって、実は、とてもありがたいことでもある!”と、感謝の気持ちを持てるようになる。
すると、ネガティブなことを受容できるようになって、避けなくなるのです。
結果、ネガティブな感情を抑圧する傾向がなくなる。
ふー。
今日もまた、すごーく長くなってしまいました・・・笑
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます!
ちなみに、うちの奥さんは、長いと、途中で読むのをやめるらしい。
ひ、ひどい・・・。
この記事は、ついついネガティブな感情を抑え込んでしまう傾向がある
(しかも、リウマチという自己免疫疾患を持っている)
自分のために、自分に言い聞かせるように書きました。
結果的に、
ネガティブな感情を抑圧する傾向にある人に、
どのようにディマティーニメソッドでアプローチしたらいいのか、
そのガイドラインにもなりました。
最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。
飛田貴生