エルサとPTSD 「アナと雪の女王」とトラウマセラピー

【ご注意ください】

この記事には、映画『アナと雪の女王』のあらすじ・ネタバレが含まれています。

心理セラピストの飛田貴生です。

映画『アナと雪の女王』を観ました。

この映画には、

無条件の愛によって、ありのままの自分になること

が、メタファー(比喩)として描かれていました。

心の痛み、トラウマ(PTSD=心的外傷後ストレス障害)は、

「真実の愛」(=無条件の愛)によって癒すごことがきるという、

寓話であり、心理セラピーのケーススタディです。

心理セラピストの立場から、私見たっぷりに『アナと雪の女王』の解説を、紹介したいと思います。

「トラウマ」と「凍りつき反応」

アルンデラ王国の王女エルサには小さな頃から、

触れたものを凍らせ、雪と氷を自由に操れる、魔法の力がありました。

ある日、妹のアナと一緒に、遊んでいたときのことです。

エルサは、あやまって氷の魔法をアナの頭に当てて、彼女を傷つけてしまいます。

すぐに、そのことに気づいた両親は、森に住むトロルのところに助けを求めにいきます。

トロルは、言います。

「凍りついたのが、頭(マインド、思考)で本当に良かった。

心(ハート)が凍りついていたら、助けられなかった・・・」

と。

そして、トロルは、魔法の力で、たちまちアナの傷を治してしまうのでした。

そして、アナの記憶も一緒に消してしまいます。

けれど、その日以来、エルサは、

アナを傷つけてしまった”罪悪感”から、 魔法の力(自分の愛せない部分)を隠すために、

部屋に閉じこもって暮らすようになります。

人との関わりを一切、避けて、妹のアナでさえも遠ざけてしまうのでした。

エルサのこうした傾向は、「分離」「凍りつき反応」と呼ばれるものです。

「分離」とはトラウマ的な出来事と、感情を切り離す、心の防衛機能のこと。

エルサは、大切な妹のアナを傷つけてしまったことで強い罪悪感を感じ、ショックを受けました。

その事実を受け止めきれず、感情を切り離すことで、

何も感じないように、心を無意識に守ったのです。

つまり感情を、

凍りつかせて(Ice-olation)

分離(Isol-ation)させたのです。

そうやって、感情を分離させないと、つらすぎて堪えきれなかったのです。

こうした「分離」や「凍りつき反応」は、自分の心を守るための、防衛機能なのです。

エルサの部屋の閉ざされた大きな扉は、

彼女の閉ざされた心(凍りついた心)を象徴しています。

エルサは、アナを傷つけてしまった強い罪悪感によって、

PTSD(心的外傷後ストレス障害)になってしまったと、見ることもできるでしょう。

『アナと雪の女王』の原題は、『Frozen』(フローズン)ですが、

これは、トラウマによって、凍りつき反応を引き起こしている、

エルサの「心」を、表しているのではないかと思います。

エルサの暴走と「扁桃体」

それから時が経ち・・・

エルサは20歳になって、女王に即位するための戴冠式を迎えます。

たくさんの人たちがお城にやってきて、エルサは、久しぶりに、人前に姿を現します。

そして、事件は起こります。

アナとのケンカによって感情を爆発させたエルサは、大勢の人たちの前で、魔法の力を使ってしまうのです。

そして、魔法の力(自分の愛さない部分)をたくさんの人に見られてしまったエルサは、

逃げるように城を後にし、雪山へと入っていくのでした。

そして、魔法の力で氷の城をつくると、今度は、その城の中に籠ってしまいます。

エルサは、自分の力で魔法をコントロールできなくなっていたのです。

このとき、エルサには、「扁桃体ジャック」が起きていた可能性があります。

「扁桃体」は、怒りや不安、恐れといったネガティブな感情を司っている、脳の部位のこと。

PTSDの傾向がある人は、「扁桃体」が、過剰に活性化しています。

トラウマの出来事を、突然、鮮明に思い出す、フラッシュバックが起きると、

脳の中で、コルチゾールなどのストレスホルモンが、大量に分泌されます。

すると、怒りや恐れ、不安といったネガティブな感情を、自分でコントロールできなくなるのです。

こんな風に、「扁桃体」が活性化して、

感情に飲み込まれてしまう現象のことを、「扁桃体ジャック」といいます。

この状態にあるとき、私たちは、目の前の出来事に、

自らの意思で、「応答・対応」(response)することができません。

つまり、自分の意思で自分をコントロールできないのです。

「扁桃体」は、「爬虫類脳」や「動物の脳」とも呼ばれます。

「扁桃体ジャック」が起きると、

動物のように、外部からの刺激にただ「反応」(reaction)して、生きるようになるのです。

きっと、こうしたことが、エルサの魔法の暴走を引き起こしたのでしょう。

宇宙最強のヒーリング・パワー

アナは、エルサの後を追い、彼女を迎えにいきます。

しかし、エルサは、それを拒み、言い争いに・・・

そして、あやまって氷の魔法を、アナの胸(心=ハート)に当ててしまうのでした・・・。

そして、アナたちは、再びトロルのもとに助けを求めにいきます。

けれども、トロルは言います。

「心(ハート)が凍ってしまっていては、もう、私たちの力では、助けることはできない。

アナの凍った心をとかすには、”真実の愛”が必要だ・・・。

と。

そして、アナたちは、真実の愛とは「愛する人とのキスである」と解釈し、王子様のもとへと向かうのでした。

トロルの言葉を聞いて、以前に、Dr.ジョン・ディマティーニが教えてくれた

ヒーリング(癒し)についての、シークレット(秘密)を思い出しました。

Dr.ディマティーニは、世界的ベストセラー「ザ・シークレット」にも登場する、

ヒーリングの達人で、人間行動学の世界的権威です。

Dr.ディマティーニは、

「愛と感謝」こそが、宇宙最強のヒーリング・パワーである

と教えています。

しかし、ここでDr.ディマティーニが言っている「愛」とは、

親が子供に示す愛情や、男女の愛情のような一般的な文脈で使われる「愛」とは、まったく異なる概念です。

けれど、多くの人が考える「愛」は、アナと同じで、

「誰からから与えてもらうもの(自分が他者に与えるもの)」

であるのでは、ないでしょうか。

けれど、真実の愛である、無条件の愛は、頭(マインド)では、決して理解できないのです。

「愛」を知覚・認識できるのは、あなたのハートだけだからです。

心を解かす「愛と感謝」の魔法

そして、ラストシーン。

アナの目の前で、姉のエルサが、王子様(実は悪いやつでした)に殺されそうになっています。

そこに、アナを愛する、山男のクリストフがトナカイに乗って走ってきます。

アナは、

「愛する人とキスして自分の命を救うか」

「エルサの命を助けるために自分の命を投げ出すか」

の選択を迫られます。

そして・・・

エルサの命を守ることを選択したアナは、氷の魔法によって全身が凍りついてしまうのでした・・・

そのとき、エルサは、ついに気がついたのです。

どれほど、自分が愛されていたかということを。

その瞬間に、エルサのハートは大きく開きました。

エルサが、無条件の愛(=真実の愛)を見いだした瞬間です。

宇宙最強のヒーリングエネルギーである、

「無条件の愛と感謝」は、凍りついたエルサのハートを解かしました。

そして、愛の周波数は、アナにも伝搬(シンクロ)しました。

全身を覆っていた氷が解け、アナは、エルサの腕の中で息を吹き返したのです。

そのとき、エルサは、魔法の力(自分の愛せない部分)を受け入れ、

それをコントロールできるようにもなっていました。

エルサは、ありのままの自分を愛し、受け入れられるようになっていたのです。

こうして、無条件の愛の魔法によって、心の氷が解け、

エルサは、ありのままの自分に戻ったのでした。

ありのままの自分になる方法

『アナと雪の女王』は、

無条件の愛によって、ありのままの自分になる

ということを伝える、とてもよくできた寓話だと思います。

心理セラピストの私のもとには、

エルサのように過去のトラウマによって

心が凍りついてしまった人たちが次々に、やってきます。

例えば、幼い頃に、父親に怒鳴られたり、拒絶されたりした経験のある人は、

「私は、お父さんから愛されていない」

という、思い込みを持っていたりします。

そして、そうした幼少期のトラウマが無意識にずっと残っていて、

大人になった今でも、恋愛や夫婦関係、その他の人間関係に、

大きな影響を与えていることがよくあるのです。

中には、そうしたトラウマによって、PTSDのような傾向を示し、

「扁桃体ジャック」による、感情の浮き沈みで、悩んでいる人も少なくありません。

そうした人には、エルサのケースのように、

無条件の愛で、凍りついた心を解かす、ヒーリングを提供しています。

「お父さんから愛されなかった」と感じたトラウマの体験について

ディマティーニ・メソッドというヒーリング手法を行なっていきます。

数時間かけて、ワークを最後までやり終えたとき、

どれほど、自分がお父さんから愛されていたかが、ハートでわかります。

お父さんへの「愛と感謝」の気持ちが内側から溢れてきて、涙が止まらなくなる人も多い。

それは、

もうすでに、自分はありのままで、深く愛されている

と、気づく、ブレイクスルー(変容)の瞬間です。

その気づきによって、

「私は、ありのままでいい。そのままでいい。」と、

自分を受け入れ、愛せるようになる。

そうやって、

ありのままの自分でいることを、自分自身に許可できるようになるのです。

Heart Of Love(ハートの中の愛)

多くの人たちが、「愛」とは、誰から与えてもらうものだと信じいます。

王子様が現れて、自分に愛を与えてくれたら、そのとき幸せになれるはず・・・

と。

しかし、無条件の愛(真実の愛)は、誰かから与えてもらうものではないのです。

愛は、もう既にそこにあるもの。

外側に探し求め、人から与えてもらうものではなく、

今この瞬間に、自分のハートの内側に、見いだすものなのです。

そして、”もう既にある愛”に気がついたとき、

凍りついた心は、愛の力によって解かされます。

そして、ハートが大きく開いたその瞬間に、ありのままのあなたが姿を見せるのです。

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