トラウマをディマティーニメソッドとCBDで癒す

今週は、トラウマが原因の「シャットダウン」(解離、凍りつき反応)とその解消法について私見たっぷりに、お話したいと思います。

心理セラピーが難しい人

ディマティーニ・メソッドのワークを完了させるのが難しい人(心理セラピーができない人)、というのが、一定数いらっしゃいます。

これは、メソッド開発者の、Dr.ジョン・ディマティーニが講師をする、ブレイクスルー・エクスペリエンス セミナーも同様です。

毎回、100人に、1人か2人ぐらい、最後までブレイクスルーできない人が出るんです。

ちなみに、ここ数年、私は、”本家”のファシリテーターに呼ばれなくなってしまったので(態度が悪くて嫌われたみたいです^^;)最近の状況は、正直、わからないんです。

でも、きっと、ワークできない人が一定数、出てしまう状況は今も変わっていないと思うんですよ。

だって、私のセミナーや、個人セッションに、”本家”でブレイクスルーできなかったと言う方がよくいらっしゃるので。

さらに、ディマティーニ・メソッドを教える資格を取得する、ファシリテーターの養成トレーニングの参加者の中にも、一度も、ブレイクスルーを経験したことがない人が、一定数いるんです。

つまり、ディマティーニ・メソッドのファシリテーなのに一度も、ワークできたことがない人がいる、というこです。

もちろん、全体の数パーセントと、数は、多くないですよ。

でも、100万円近い金額を投資して、繰り返し何度も、ディマティーニ・メソッドにチャレンジしているのに、ワークできない人というのが、存在しているんですね。

これはあまり語られない事実ではありますが。

以前は、そうした人たちがワークできない理由が、よくわからなかったんです。

Dr.ディマティーニは、

ディマティーニ・メソッドは、再現性のある科学である。

適切に取り組めば、誰がやっても、同じ結果が出る。

と、言っている。

だから、ワークできない人が出てしまうのは、

「ファシリテーターの技術が足りていない」
「本人が本気でやろうとしていない」

のどちらかだと、ずっと、思っていたんです。

だから私、ファシリテーターの技術を向上させる努力と、クライアントさんに、自分の人生の責任を持ってもらう(=本気になってもらう)
ための意識改革を、ずっとやってきました。

一人でも、多くの人に「愛と感謝の悟りの境地」である、ブレイクスルーを体験してもらいたいという、想いで。

けれど、10年以上、そうした努力を続けても、まったくワークができない人が、一定数、出てしまう状況は何も変わらなかったんです。

それで私、「これはさすがに、おかしいぞ」と思って、ワークできない理由が他に何かあるはずだと、考えるようになりました。

ポリヴェーガル理論

そんなとき、「ポリヴェーガル理論」と出会いました。

そして、ワークができない理由が「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)が原因の「シャットダウン」(解離、凍りつき反応)であると、わかったんです。

「ポリヴェーガル理論」は、アメリカの神経生理学者で、イリノイ大学名誉教授の、ステファン・W.ポージェス博士が提唱している、概念です。

ポリヴェーガルとは、「複数(poly)の迷走神経(vagal)」という意味です。

これまで、人間の「自律神経系」は、「交感神経」と「副交感神経」の2つである、考えらていました。

しかし、ポージェス博士は「副交感神経」は、さらに2つの神経枝(えだ)の、「腹側(ふくそく)迷走神経複合体」と、「背側(はいそく)迷走神経複合体」に分かれていて、これら3つの迷走神経が、PTSD(トラウマ)や、発達障害などの発現メカニズムに関連していることを、発見しました。

ポージェス博士は、「神経系」(ニューロン)が危機を感知し自動で身体の生化学的な状態を

変化させる防衛機能のことを「ニューロセプション」と呼んでいます。

これは、人間が、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった感覚情報をもとに行う、「パーセプション」(認識、認知、知覚)とは、まったく別のシステムです。

他者と交流する神経

例えば、あなたは今、このメールを自宅のソファで寝転がって、読んでいるとしましょう。

あなたの自律神経系は、「ニューロセプション」によって、今の状況が「安全である」と、判断し副交感神経の一つ「腹側迷走神経複合体」を、オンライン(青信号)にしています。

 

腹側迷走神経は、”社会とのつながりを促す、ソーシャル(社交的)な神経”で、私たちが他者とコミュニケーションするときに働きます。

私たちは、自分が安全な環境にある時だけ、心を開いて、他者とコミュニケーションすることができます。

その安全かどうかの判断を、認知機能を、使わずに、自律神経が自動でやっているんです。

戦う・逃げる神経

でももし、今、突然、あなたの部屋に、泥棒が入ってきたら、どうなるでしょう?

するともう、呑気にメールなんて読んでいる(他人と交流している)場合ではありません。

泥棒を「認知」(パーセプション)するより早く、自動的に「ニューロセプション」が、

「腹側迷走神経」との接続を切断し、あなたの身体の指揮権は、「交感神経」に移行します。

危機に対応するために「交感神経」がオンライン(黄色信号)になる、自律神経の反応を「闘争・逃走反応」(戦うか、逃げるか反応)と言います。

「闘争・逃走反応」にスイッチが入ると、心拍数が、急激に、増加し、いつもよりも、身体が俊敏に動くようになって”火事場の馬鹿力”が使えるようになります。

そうやって、考えるよりも早く、泥棒と戦うか、逃げるか、決断し、すぐに行動に移すことができます。

サバイバルする神経

ところがもし、部屋に入ってきたのが、飢えたライオンだったら、どうでしょう。

ライオンを「パーセプション」するより早く、自動的に「ニューロセプション」が発動し、あなたの身体の主導権は、即座に、副交感神経の1つ「背側迷走神経複合体」に移行します。

すると、ヘビに睨まれたカエルのように、身体が硬直し、フリーズしてしまうでしょう。

場合によっては、恐怖を感じないように感情のスイッチをオフにしたり、気絶したり、失禁したりするかもしれません。

「背側迷走神」がオンライン(赤信号)になって、心(感情)や、身体が麻痺したように動かなくなる自律神経の反応を、「シャットダウン」(解離、凍りつき反応)と言います。

捕食動物は、逃げる獲物に興奮し、動かない獲物に興味を失うという習性があります。

だから、「シャットダウン」すれば(凍りついたように動かなくなれば)生き残る可能性が、わずかに上がります。

「カメが甲羅の中に引っこむ」「トカゲが、死んだふりをする」というように、「シャットダウン」は、本来、爬虫類
(より原始的な生物)が有していた防衛本能ですが、進化的変化の過程で、人類を含む、哺乳類にも、引き継がれました。

つまり、「シャットダウン」は人間や動物が命の危機に瀕したときに、自動的に作動する、最後のサバイバル(生き残り)戦略なのです。

シャットダウンした人の特徴

過去にトラウマを経験した”トラウマサバイバー”には、シャットダウンが起きていることが少なくありません。

例えば、幼少期に、性的な虐待や、親の暴力によってシャットダウンした人は、大人になってもその状態が継続され、感情が凍りついたように感じられません。

カメやトカゲは、一度シャットダウン(擬死)しても、安全になれば、すぐにもとの平常モードに戻ることができます。

けれど、私たち人間の自律神経系は、一度、シャットダウンすると、トラウマを癒さない限りは、ずっとそのままです。

そうした人たちは、表情に乏しく(=表情筋が動かない)、声にも、抑揚がありません。

そのために、人から、「何を考えているかわからない」と言われてしまうことがよくあります。

これは、内的な感情を、表情筋と声帯に伝える「腹側迷走神経」がオフラインになっているためです。

そうした人は、シャットダウンによって感情のスイッチを切っているために、「自分(の感情)と、つながれない」「自分が何が好きなのか、
何がやりたいのか、よくわからない」という、悩みを持っていることが少なくありません。

けれど、そうした苦しみや、生きづらさが、どこから来ているのか、理由が、さっぱりわからない。

それも、そのはず。

そうした人は、トラウマによって、つらい感情と出来事を、切り離しているためにその出来事の「記憶」を、顕在意識から消し去っているから。

だから、自分が過去にトラウマを持っていることに、まったく気づいていないことがほとんどなんです。

なぜ経営者にPTSDが多いのか?

ちなみに、PTSDと、シャットダウンは、私の経験上、経済的、または、精神的に、自立している人に多く見られます。

実際、私のクライアントでシャットダウンしてワークできなかった人のほとんどが、ビジネスで、成功している、経営者でした。

そのほかでは、単身で、海外に渡って、永住している女性も、もいました。

また、格闘技経験のある人もいました。

人は、大きすぎるチャレンジや困難(トラウマ)を体験すると極端に、”自立的”になります。(逆にサポートが大きすぎると依存的になる)

例えば、幼少期に、親の暴力を体験した子供は「一日も、早く、家を出たい」と願い、働ける年齢になると、すぐに親元を離れます。
(逆に何不自由なく育った子供は、大人になっても、親元を離れません。)

つまり、自立の傾向が強い人ほど、大きなトラウマを持っている可能性があると、いうことです。

解離にトークセラピーは効果がない

「シャットダウン」している人は、ディマティーニ・メソッドのワークを完了させる(心理セラピーをする)のが、難しいことが多いんです。

ディマティーニ・メソッドには、「過去のトラウマ体験を、ワーク中に、もう一度、再現して、その瞬間を心の目で見る」

という、プロセスがあります。

けれど、シャットダウンしている人(感情を切っている、記憶を消し去っている人)は、その瞬間に行くことができず、ワークができないんです。

つまり、
===============================
ディマティーニ・メソッドは感情のワークであるため、感情を感じられないとワークするのが難しい
===============================
ということです。

だから、シャットダウンの傾向がある人が、他の人のように、愛と感謝が溢れる、ブレイクスルーができなかったからといって、その人が間違っているわけでも、悪いわけでも人よりも劣っているわけでも、ありません。

シャットダウンは、生化学的な(自律神経の)反応なので、自分の意思ではコントロールすることができません。

自分の意思で、心臓を止めたり、心拍数を変えたり、発汗を調節できないのと、まったく、同じです。

以前に、Dr.ディマティーニに、「シャットダウンの傾向がある人に、ディマティーニ・メソッドを行うには、どうしたらいいか? 」

と、質問したことがあります。

そのときの回答は、

「比較的、取り組みやすい、トラウマから遠いものをから順番に、(玉ねぎの皮を、上から剥がしていくように) ワークしていくといい」

と、いうものでした。

つまり、いきなりは、核心をつけないので、外堀から少しずつ埋めていくということです。

時間をかけて、コツコツと地道に、ディマティーニメソッドに取り組んでいくのが大切ということです。

ただ、実際は、「シャットダウンしている人に、心や感情の面からアプローチしても、ほとんど効果が期待できない」というのが、多くのトラウマセラピーの専門家たちの見解です。

世界的なトラウマの権威の、ベッセル・ヴァン・デア・コーク博士や、「ポリヴェーガル理論」提唱者のステファン・W・ポージェス博士も、

「シャットダウンしている人に、従来のトークセラピーは、効果がない」

と断言しています。

私自身、14年間のキャリアの中で、シャットダウンの傾向がある人にディマティーニ・メソッドで、まったくお役に立てずに、悔しい思いを、何度もしているので、

この件に、関しては、Dr.ディマティーニの見解よりも、コーク博士や、ポージェス博士の見解を、採用しているんです。

「トップダウン」と「ボトムアップ」

トラウマに対して、心や感情からアプローチする手法を、「トップダウンモデル」と言います。

強い感情(ネガティブと、ポジティブ)を扱う、ディマティーニ・メソッドはこちらに入ります。

一方、トラウマに対して、身体からアプローチする手法を、「ボトムアップモデル」と言います。

ヨガや、瞑想、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)などがこちらに入ります。

私は、2年ほど前から、シャットダウンや、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の傾向が見られ、ディマティーニ・メソッドに取り組むのが
難しいクライアントには、ボトムアップモデルとして、「カンナビジオール」(CBD)を併用することを、おすすめしています。

CBDは、トラウマを癒す

CBDは、「大麻草」に含まれる、有効成分(化学物質)です。

これは、「神経伝達物質」(ニューロトランスミッター)であり、経口で摂取することによって、脳に直接、届き、しあわせホルモンの「セロトニン」や、至福ホルモンの「アナンダミド」(アナンダマイド)の分泌を促します。

「セロトニン」や「アナンダミド」といった「神経伝達物質」が脳内に十分にあるとき、私たちは、安心感や、幸福感、リラックスを感じます。

逆に、こうした「神経伝達物質」が不足しているときに、憂うつや、不安感、ストレスを感じやすいのです。

海外では、CBDを、PTSDの治療に活用する医療者もいて、科学的なエビデンス(証拠)があります。(1,2)

CBDは、PTSDで苦しむ人にとって、非常に役立つ「抗不安効果」があるだけでなく、

トラウマ記憶が、脳内で固定化されるのを阻害する可能性があることが、研究によって明らかになっています。

2016年に行われた、ある研究では、強い恐怖刺激(トラウマ)を与えたラットにCBDを摂取させると、「シャットダウン」(凍りつき反応)が軽減することがわかりました。

さらに、CBDを、摂取したラットは、トラウマと同じ状況に置かれても、恐怖を感じることが、著しく、軽減しました。

このことから、CBDは、PTSDに伴う、シャットダウンと、フラッシュバックの解消に効果的である可能性があることがわかります。

PTSDになりやすい人の特徴

また、PTSDの人は体内の「エンドカンナビノイド」(人間の体が自前で作っている、大麻に似た化学物質)が、少ないという、エビデンスもあります。

アメリカ同時多発テロ事件(9/11)のときに世界貿易センタービルの近くで、事故を目撃した人たちを、対象にした2013年の研究では、体内の「エンドカンナビノイド」が少ない人ほど、PTSDに、なりやすいことがわかりました。

つまり、CBD(カンナビノイドの一つ)は、「抗不安効果」によって、恐怖やトラウマへの耐性を強めてくれる、可能性があると、いうことです。

「心理セラピー」と「CBD」の併用

また、以前に、アメリカでCBDを医療に取り入れている、医師のフィリップ・ブレア博士という方が来日したときに、CBDは、心理セラピーと非常に相性が良く、併用するといいとアドバイスをもらいました。

つまり、PTSDの傾向が見られる人には、トップダウンと、ボトムアップを、ハイブリッドする(組み合わせる)、といいというのです。

それ以来、シャットダウンの影響で、ディマティーニ・メソッド(トップダウン)が難しいクライアントには、メソッドに取り組む前にある程度の一定期間、CBD(ボトムアップ)を、使うように、おすすめしています。

その結果、シャットダウンから回復して、ディマティーニ・メソッドでブレイクスルーを体験できたクライアントさんが、何人かいます。

どのぐらい使えばいいのか?

CBDを、毎日、どのぐらいの量、どのぐらいの期間、摂取したらいいのかは、正直、手探りの状態なんですが、「1日CBD25mgを、3ヶ月間、摂取する」というを、一つの目安にしています。

これは、アメリカのコロラド大学の精神科医が不安と不眠の症状がある患者に、CBDを使った2019年の臨床実験の結果を、参考にしています。(3)

この実験データを見ると、1日あたり、25mgのCBDを、摂取すると、1〜3ヶ月で効果が出ていることがわかります。

この実験は、PTSDの患者を対象にしたものではありませんが、メンタルヘルスの改善に、必要なCBDの摂取量と期間を判断するのに、とても参考になります。

このため、「シャットダウン」の傾向が見られる人には、まず、1〜3ヶ月程度、CBDを摂取してもらい、その後、ディマティーニ・メソッドに取り組むという、ボトムアップと、トップダウンを併用したやり方を個人的におすすめしています。

もちろん、CBDが、すべての人に効果的であるかは、わかりません。

けれど、私は、試してみる価値はあると思っています。

ちなみに、現在、日本で購入できるCBDは、玉石混交です。

実際に、使う場合は、ご自分でよく調べて、質の良いものを選ぶといいでしょう。

合法で安全なCBD製品

参考として、私が、知人の医師から教えてもらったおすすめの製品を2つ紹介します。

なお、どちらも、日本の厚生労働省と税関を正式な手順で通過した合法で安全な製品です。

FOCUS
*この製品の場合は、1日2.5mlの服用で、CBD25mgを、摂取できます。

製品の購入方法はコチラです
*国内(千葉)の配送センターより発送。通常2-3日で届きます。

Hemp Oil Drops 1500mg CBD(15%)
*この製品の場合は、1日5滴の服用で、CBD25mgを、摂取できます。

(私は、FOCUSを使っています。エンドカもいいらしいです。)

私は一人でも多くの人に「愛と感謝の悟りの境地」である、ブレイクスルーを体験してもらいたいと思ってこの仕事をやっています。

だから、シャットダウンの影響でワークができない人を見ると、自分の力不足を痛感し、すごく悔しい。

今後も、効果的、効率的に、「シャットダウン」を解消する方法を、模索し、研究し続けていきます。

追伸:

ディマティーニ・メソッドでブレイクスルーできないケースのすべてが、PTSDやシャットダウンであるわけではありません。

恥や罪悪感と、直面するのを避けようとワークに無意識に抵抗している場合もあれば、

なんらかの理由で「心理的逆転」(変わりたいけど、変わりたくない)が起きているケースも、あります。

こうしたケースについては、またの機会にお話しようと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

飛田貴生

1:
PTSDと医療大麻・CBD

2:
CBDオイルを使った治療で、PTSDが改善した事例を紹介します

3:
不安・不眠とCBD

引用、参考文献

『身体はトラウマを記録する
ー脳・心・体のつながりと回復のための手法』
(ベッセル・ヴァン・デア・コーク著)

『ポリヴェーガル理論入門
ー心身に変革をおこす「安全」と「絆」』
(ステファン・W.ポージェス著)

『CBDのすべて
ー健康とウェルビーイングのための医療大麻ガイド』
(アイリーン・コニェツニー,ローレン・ウィルソン著)

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