サレンダー 乾癬、リウマチをあるがままに受け入れる
「乾癬」という難病
私には、「乾癬」(かんせん)という皮膚病の持病があります。
全身に、まだら模様の赤い斑点ができるとても醜い皮膚病です。
「乾癬」は、厚生労働省が「特定疾患」に指定している、とても治りにくい難病です。
しかも、私の場合はかなりの重症。
この病気が発症したのは、中学生の頃で、かれこれ40年の付き合いです。
「乾癬」は、生死には関わらない病気ですが、
見た目が酷いのと、強い痒みで、精神的な苦痛が大きい。
私は、子供の頃から、ずっと、人前で裸になることを避けてきました。
温泉に行っても、誰もいない深夜を見計らってお風呂に入るというように。
プールや海水浴なんてもってのほか。
中学生以来、人前で肌をさらしたことはありません。
そんな状態が大人になっても、ずっと、続きました。
夢を叶えるための「苦行」
ところが、以前、新婚旅行でハワイのマウイ島に行くことになりました。
私には、美しい海でシュノーケリングしたり、イルカと泳ぐ夢がありました。
これは、いままでやりたくてもできなかったこと。
それが実現するチャンスでした。
しかし、この醜い皮膚病のままでは、それは叶いません。
そこで私は一念発起して、皮膚病を完治させることを決意しました。
私はすぐに、「乾癬」にとても効果的と言われている、ある自然療法を始めました。
この食事療法は、とても制限の多いたいへんなものでした。
肉は、基本的に一切ダメで、少量のラム(子羊)や、鶏肉だけ食べることが許されていました。
さらに、野菜にも制限があって、ピーマンなどのナス科の野菜や、トマト、ジャガイモはNG。
もちろん、アルコールもダメで、少量の赤ワインだけ例外的にOKでした。
さらに私の場合は、血液検査で、小麦粉アレルギーがあることが分かったので、
パスタやパン、うどんなどの小麦粉製品も全滅・・・。
いったい何を食べたらいいの?!という感じです(苦笑
食事は、玄米と、根菜類、レタスなどの葉モノ野菜が中心で、
毎日、同じものばかり食べていました。
ハンバーグとステーキが大好物の私には、苦行です・・・。
大好きなビールも一切、やめました。
食事療法だけでなく、「大腸洗浄」や「ひまし油の添付」、
「カイロプラクティックの施術」など、の治療法も試しました。
もちろん、「ディマティーニ・メソッドのワーク」も何度も行いました。
病気を治すために、できることは何でもやろうと決意し、
自分を律して、そうした苦行に耐え続けたのです。
夢やぶれて
食事療法を始めて、約一年が経過した頃。
私の身体は、ボロボロになっていました。
体重は10キロ近く減って、頬はゲッソリ。
「乾癬」は、良くなるどころか、悪化していました。
おまけに、もう一つの持病の「リウマチ」まで悪化してしました。
極端な食事療法行ったことが原因だったのかもしれません。
この方法は、他の人には効果的でも、私の体には合っていなかったのでしょう。
そして、新婚旅行でマウイに行く日がやって来ました。
皮膚の状態は最悪で、おまけにリウマチの痛みもあって、痛み止めの薬が手放せない状態。
マウイのビーチではTシャツを着たまま海を見ていました。
もちろん、シュノーケリングやドルフィンスイムもできません。
そして・・・
新婚旅行から帰ってきて、私は食事療法を一切止めてしまいました。
病気を治すことをあきらめたのです。
生物学的製剤ヒュミラ
これだけやって治らないのだから、もう一生病気のままだと思いました。
そして、病院に行くことに決め、「乾癬」と「リウマチ」に、
劇的に効くと評判の新薬を使うことにしたのです。
その薬は、「生物学的製剤ヒュミラ」というものでした。
当日は、治験が終わったばかりの、新しい薬だったので、
副作用が怖くて、使うことをずっと躊躇していたのです。
しかし、もう他に選択肢はありません。
「ヒュミラを使い始めると、すぐに劇的な効果が出ました。
リウマチの痛みがピタリと止まり、皮膚の症状も、みるみるきれいになっていきました。
およそ、一ヶ月で、全身の「乾癬」の炎症がすべて消え、
いままで何十年も皮膚病であったことがウソのように、すっかり、肌がきれいになってのです。
ドルフィンスイム
何十年ぶりに、プールに行って泳ぎました。
うれしくて、毎日のように、近所のサウナにも通いました。
そして、リベンジのために、
ハワイのオアフ島に旅行に行くことにしたのです。
もちろん、夢のドルフィンスイムをすることが、いちばんの目的です。
幸運にも、十数頭の「スピナードルフィン」の群れと出会って、
数メートルの距離のところでイルカと一緒に泳ぐことができました。
シュノーケリングで、「ホヌ」(ウミガメ)や、「熱帯魚」も見れました。
さらに、船の上から遠くにいる「クジラ」も、見ることができたんです。
ホテルに帰って、プールで泳ぎ、ジャグジーも楽しみました。
前回、マウイでできなかったがすべてできた。
長年の夢がついに叶ったのです。
サレンダー(降参)
この体験を通じて学んだことがあります。
それは、
「人は、変えられないことを変えようとするときに最も苦しむ。
そうして、格闘しているときには、夢や願いは叶わない。」
けれど、
「変えられないことを、あるがままに受け入れてしまえば、苦痛から解放される。
格闘することをやめて、「降参」(明け渡し、手放し)したときに、夢や願いは、実現する」
ということです。
「乾癬」と治そうと、必死に格闘していたとき、私は最も苦しみました。
「良くなりたいのに、良くならない」という状況こそが、苦しみの原因だったのです。
あれだけ、つらく、苦しい思いをしたのに、結局、シュノーケリングもドルフィンスイムもできなかった。
けれど、「もう、乾癬は一生、治らない」と降参して、
病気であることをあるがままに受け入れた途端に、すごく楽になりました。
格闘する苦しみから、解放されたのです。
ヒュミラを使っていれば、症状を抑えたれるから、「乾癬」による直接的な、心身の苦痛もありません。
そうやって、自分が病気であることをあるがまなに受け入れたら、
シュノーケリングもドルフィンスイムもすんなり手に入ったのです。
これでいいのだ
もしかしたら、あなたも今、
どうにもならない状況を変えるために、必死に、格闘しているかもしれません。
例えば、
お金の問題をなんとかしたいのに、抜け出せない・・・
仕事の人間関係で悩んでいるのに、どうにもできない・・・
結婚したいに、いい人に出会えない・・・
子供が欲しいのに、何年も授からない・・・
子供が自分の言うことを聞いてくれない・・・
といったような状況です。
もしかしたら、この中には、努力次第で、変えられるものがあるかもしれません。
けれど、世の中には、どんなに努力し、頑張ったとしても、
決して変えられないことがあることも、事実なのです。
だから、いっそ、そうした「変えたいという思い」を手放して、
目の前のあるがままの現実を、受け入れてしまってみてはどうでしょう。
お金がなくても、
人間関係がうまくいっていなくても、
恋人がいなくても、
結婚できなくても、
子どもとの関係がうまくいっていなくても、
病気でも、
「これでいい」と・・・。
変えられないことを変えようと、もがくから苦しむのです。
けれど、あるがままの現状を受け入れてしまったらと、楽になります。
そして不思議なことに、
「変らなくていい、このままでいい」と、
降参したときに、現実が変わりはじめることもある。
でも、もし、それが叶わないとしても、
もがき、苦しむことを、やめれば、心に平安が訪れるのです。
「神よ変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、
変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。」
ーニーバーの祈り
「幸せになろうとするのをやめさえすれば、
私たちはとても充実した時を過ごせるだろう。」
ーイーディス・ウォートン
「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候。
死ぬ時節には死ぬがよく候。
これはこれ災難をのがるる妙法にて候。」
ー良寛
「これでいいのだ」
ー赤塚 不二夫